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株式会社ロハス8 発行最終更新 2026年8月7日

介護・福祉DX2026年8月7日

「あの子の見方が、園長の頭の中にしかない」

朝七時半。門が開く前に、園長はもう一度、今日の配置を組み直します。人が足りないからではありません。今日どの子に誰がつくかを決められるのが、園長ひとりだからです。

※ この記事は、複数の事例を参考に構成したモデルケースです。特定の企業を指すものではありません。

朝七時半。門が開く前に、園長はもう一度、今日の配置を組み直します。

岩手県内の、定員六十名の認可保育園を思い浮かべてください。職員は十二名。今日は一人、休みです。

組み直す理由は、人が足りないからではありません。今日、どの子に誰がつくかを決められるのが、園長ひとりだからです。

決めているのは、シフトではありません

決めているのは、配慮です。

あの子は大きな音が苦手だから、遊戯室の時間は誰かがそばにいる。あの子は昼食前が崩れやすいから、その時間に慣れた先生を残す。あの子のお母さんは、今月は特に急いでいるから、お迎えのときに長く話しかけない。

これは表に書ける情報ではありません。だから園長の頭の中にあります。そして園長が休んだ日、園は回ることは回りますが、いつもと違う一日になります。

「言葉にできないから、教えようがない」

そう言われます。実際、難しいことです。

でも、難しいのは「あの子の性格」を言葉にすることであって、何が起きて、何をしたら落ち着いたかを書くことではありません。後者なら書けます。

人柄は書けなくても、場面は書けます。

「十時十五分、遊戯室に入る前に泣いた。廊下で二分待ってから入ったら大丈夫だった」。これで十分です。三行書けば、次の人が同じ手を打てます。

これは、その園だけの話ではありません

こども家庭庁の令和7年度子ども・子育て支援等推進調査研究事業「保育士等の意識及び業務負担軽減に関する調査研究」報告書(令和8年3月)によると、保育の現場で対応が困難なこととして「発達に課題のあるこどもへの対応」を挙げた保育士は 62.7% でした。全国一万六千人あまりの保育士の回答で、最も多い項目です。

困難だと感じている人が三人に二人いる。つまりこれは、園長の力量の問題ではなく、現場の共通の重さだということです。

重いものを一人で持っているから、代われる人がいない。

記録を増やす話ではありません

「これ以上、書くものを増やせません」——その通りです。増やしません。

日誌も、指導計画も、児童票も、そのままで結構です。足すのは、気になった子について一日三行だけ。様式は要りません。スマホのメモでも、連絡帳の裏でも構いません。

大事なのは、次の人が読めるところに置くことだけです。園長の手帳の中にあると、それは記録ではなく、まだ頭の中の続きです。

まず、今週の一人だけ

全員分は要りません。

今週いちばん気になった子を一人選ぶ。その子について、「いつ・何があって・何をしたら落ち着いたか」を一日三行だけ残す。それを、職員が見られる場所に置く。

金曜に、園長以外の誰かがそれを読んで「なるほど」と言えば成功です。何も伝わらなければ、書き方が足りないと分かります。それも収穫です。

園長が休める園は、子どもにとっても良い園です

配慮が書き出されていくと、園長が見ていなくても同じ手が打たれるようになります。

それは園長が楽になる話であると同時に、その子にとって、誰が担当でも同じ配慮が届くという話です。

引き継ぐために書くのではありません。今日、その子のために書きます。

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