「記録に追われて、利用者さんを見る時間が減っていく」
同じことを三回書いていませんか。記録が重くなると減るのは時間だけでなく、次の人へ伝わる中身です。入れる前に減らす、という順番についてお話しします。
※ この記事は、複数の事例を参考に構成したモデルケースです。特定の企業を指すものではありません。
夕方、事務所に人が集まって、その日の記録を書きます。書き終わるまで帰れません。
岩手県内の、通所介護と訪問介護をやっている事業所を思い浮かべてください。職員は二十人ほど。記録は手書きで、あとからパソコンに打ち直します。
打ち直しているのは、加算の書類に要るからです。
同じことを、三回書いています
現場では、その場でメモを取ります。バイタル、食事量、様子、気になったこと。
事務所に戻って、それを記録用紙に清書します。さらに月末、請求のためにパソコンへ打ちます。
同じ情報を、三回通っています。 書き写すたびに時間がかかり、書き写すたびに少しずつ落ちます。
落ちるのは、たいてい「気になったこと」です。数字は転記されます。でも「今日は珍しく黙っていた」は、清書のときに省かれます。書く欄が無いからです。
減っているのは、時間だけではありません
記録に時間がかかると、利用者さんと向き合う時間が減ります。これはよく言われます。
もう一つ、静かに減っているものがあります。申し送りの中身です。
省かれた「今日は珍しく黙っていた」は、翌日の担当者に伝わりません。翌日の担当者は、いつもと違うことに気づけません。三日後に体調を崩したとき、誰も前兆を思い出せません。
記録は、書類のためではなく、次の人のためにあります。
ここが入れ替わると、書けば書くほど現場が弱くなります。
人が足りない前提は、変わりません
介護労働実態調査では、訪問介護について「大いに不足」31.3%、「不足」28.4%、「やや不足」21.7%——合わせて 81.4% の事業所が人手不足を感じていました。
八割を超えています。そしてこの数字が近いうちに改善する見込みは、正直なところ薄いと思います。
だとすると、考えるべきは「人を増やして記録を回す」ではなく、同じ人数で、伝わる情報を落とさない方法です。
「タブレットを配れば済む」わけではありません
記録ソフトを入れた事業所の話を聞くと、うまくいったところとそうでないところが、はっきり分かれます。
分かれ目は、入力項目を減らしたかどうかでした。
紙の様式をそのままタブレットに移すと、入力は速くなりません。指で打つ分、むしろ遅くなることもあります。うまくいった事業所は、入れる前に「この項目、誰が読んでいるか」を一つずつ確かめて、読まれていない欄を消しています。
減らしてから、載せる。この順番です。
まず、一週間ぶんの記録用紙を広げてみる
おすすめしているのは、こういう始め方です。
先週の記録用紙を広げて、「この欄、この一週間で誰かが読んだか」を項目ごとに確かめる。
読まれていない欄が、必ずいくつか見つかります。行政の様式で消せないものは残す。それ以外で、誰も読んでいないものは、まず一つ消してみる。
消したことで困ったら、戻せばいいだけです。困らなければ、それは書かなくてよかった欄です。
最初に戻ってくるのは、時間ではありません
記録を軽くした事業所が、最初に「変わった」と言うのは、たいてい時間の話ではありません。
申し送りで、人の話が出るようになったと言います。
数字を読み上げるだけだった十分が、「あの方、最近こうなんです」に変わる。前兆に気づける人が増える。結果として、あとで大きく手が要る事態が減っていきます。
書く量を減らすのは、手を抜くことではありません。伝えたいことを通すために減らすのです。
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