「在庫を数えるために、日曜に店を閉めていませんか」
棚卸しが丸一日かかるのは、数える作業が重いからではありません。探す時間と、帳簿と合わない理由を思い出す時間です。道具を買う前に決めておくことをお話しします。
※ この記事は、複数の事例を参考に構成したモデルケースです。特定の企業を指すものではありません。
年に二回、日曜に人を集めて、朝から晚まで数える。終わるころには誰も口をききません。
岩手県内の、従業員十数名の、卸と小売を兼ねた会社を思い浮かべてください。取扱品目は二千点ほど。倉庫と店と、二階の物置に在庫があります。
棚卸しは、丸一日かかります。
時間がかかっているのは、数える作業ではありません
数えるだけなら、そんなにかかりません。二千点を十人で分ければ、一人二百点です。
時間を食っているのは、探す時間です。
「これ、どこにあるんだっけ」「二階にもあったはず」「先月の入荷分、まだ開けてない箱の中かも」——数えるより探す方が長い。そして探し当てても、また来年、同じところを探します。
もう一つ食っているのが、照合です。帳簿の数と合わない。合わない理由を思い出そうとする。「あれは急ぎで出したやつだ」と誰かが言い出して、そこで十五分止まります。
数える道具を買っても、たぶん変わりません
ハンディターミナル、在庫アプリ、バーコード。ご相談を受けると、たいていこの話から始まります。
でも、これらが速くするのは「数える」ところです。いま長いのは、探すところと、合わない理由を思い出すところです。
道具が効くのは、置き場所が決まっている会社です。
決まっていない会社が同じ道具を入れると、読み取り機を持って探し回ることになります。作業は増えます。
「うちは狭いから、置き場所なんて決められない」
そう言われることが多いのですが、狭い会社ほど効きます。
決めるのは、全部の置き場ではありません。動く上位一割だけです。
二千点のうち、毎週動くのはせいぜい二百点です。この二百点の定位置を決めて、そこには他を置かない。これだけで、探す時間の大半が消えます。残り千八百点は、今までどおり倉庫の奥で構いません。
一度にきれいにしようとすると、途中で挫けます。動くものから、少しずつです。
人が減っていく前提で考える
2024年版の中小企業白書によると、事業の中核を担う人材が「不足」と答えた中小企業は 74.5% でした。四社に三社です。
在庫を探せる人、帳簿と突き合わせられる人。これも中核人材です。その人が辞めたとき、「どこに何があるか」を知っている人が社内にいなくなります。
棚卸しが重いのは、実は人手の問題ではありません。知っている人が一人しかいない問題です。
まず、今週のよく動く十品だけ
いきなり二千点を整理しようとしないでください。
今週出荷した中から、よく動く十品を選ぶ。その十品の置き場所を決めて、紙を貼る。
それだけです。次に誰かが探したとき、聞かずに見つけられれば成功です。見つけられなければ、場所の決め方が悪いということが分かります。それも収穫です。
十品ずつ、月に一度。一年で百二十品の定位置が決まります。動く二百点の半分以上です。
数える会社から、分かる会社へ
棚卸しの目的は、数えることではありません。いくら持っているかを知ることです。
置き場所が決まると、数えなくても、だいたい分かるようになります。そこまで来ると、道具が効き始めます。
順番が逆になっていないか。それだけ、一度確かめてみてください。
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